サピオACコーチの本間です。
今回は、前回説明したピッチとストライドの理解をさらに深めるため、ピッチを決定付けるパラメーターについて記載していきます。
ピッチとストライドに大きく影響する滞空時間
Hunter et al.(2004)は、多数の競技者のピッチとストライド、それに関連するパラメーターとの関係性について検討を行いました。その結果、ピッチとストライドに大きく影響を及ぼす要素は“滞空時間”であることを明らかにしました。例として高いピッチの選手は、滞空時間が短く、逆にストライドの大きい選手は滞空時間が長い傾向にあるということです。 高いピッチを獲得するためには、滞空時間を短くすることが重要です。滞空時間が短くするためには、短い滞空時間の間に、脚を素早く降り出し、次の接地を行わなければいけません。脚を素早く降り出す方法としては、脚の動作の範囲を小さくすること(阿江,2001.松林,2012.)や脚を素早く振り回すための筋力(大臀筋、ハムストリングス、大腰筋など)が、大きなパワーを発揮することが重要になると考えられます(阿江ら,1986.渡邉ら,2003)
<スプリントイメージ>

ストライドに大きく影響する地面反力(地面に加えた力)
松林ら(2012)は、ストライド型の競技者は、ピッチ型の競技者と比較して、地面反力の鉛直成分のピーク値、すなわち身体に対して真下に加えた力が大きかったことを報告しています。また、Hunter et al.(2004)は、地面から離れる際の重心の速度の影響が大きく、その速度は松林ら(2012)で示したのと同様に地面反力に関係していることを明らかにしました。
これらのことから、大きなストライドを獲得するためには、接地中により大きな力を発揮し、空中に長く滞在することことが重要になると考えられます。
注意事項
これらは、主に最大スピード時の検証であり、加速局面や減速局面などの局面においては、異なる可能性があります。
参考
Hunter, J. P., R. N. Marshall, P. J. Mcnair. (2004) Interaction of step length and step rate during sprint running. Med. Sci. Sports Exerc., 36 (2) : 261-271.
阿江通良(2001)スプリントに関するバイオメカニクス的研究から得られるいくつかの示唆.スプリント研究,11 : 15-26.
松林武生(2012)陸上競技のサイエンス スプリント動作のメカニズム 〜速く走る動作の特徴〜.月刊陸上競技,46 (3):216-218.
阿江通良・宮下 憲・横井孝志・大木昭一郎・渋川侃二(1986)機械的パワーからみた疾走における下肢筋群の機能および貢献度.筑波大学体育科学系紀要,9:229-239.
渡邉信晃・榎本靖士・大山卞圭悟・宮下 憲・尾縣 貢・勝田 茂(2003)スプリント走時の疾走動作および関節トルクと等速性最大筋力との関係.体育学研究,48:405-419.
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